Photo by Akemi Yoshihara
来年、2014年に宝塚歌劇団は創立100周年を迎えますが、注目のアニバーサリーイヤーを前に、現役タカラジェンヌだけでなく、OGたちの活躍も気になるところです。元雪組トップスターの水夏希さんもその1人。今年は、豪華な顔ぶれが揃ったOGによる記念公演『DREAM,A DREAM』にゲスト出演し、来年は、歌劇団が主催する100周年の夢の祭典『時を奏でるスミレの花たち』にも、卒業生として出演が決まっています。宝塚に固執することなく、程よい距離を保てるようになった今、改めて宝塚への愛、舞台への思いを確信したという水さんに、お話を伺いました。
「ショーの構成・演出に初挑戦し、手応えを得る」
――宝塚を退団して3年余り、様々なことに挑戦してきた水さんですが、2013年の活動もバラエティに富んでいましたね。
この3年、宝塚の男役以外は何をやるのも初めてでしたので、やらせていただける限りいろいろなことに挑戦してみようと思って、手探りでやってきましたが、今年になって、やっと自分の進むべき道が見つかった気がしています。歴史ある『屋根の上のヴァイオリン弾き』に出演させていただき、市村(正親)さんやツレさん(鳳蘭)といったベテランの方々の舞台への情熱や姿勢に触れ、やっぱり舞台に生きていきたいと確信しました。それにはまず芝居がベースにないとお客様に届かないので、ストレートプレイにも挑戦してみたいですね。
――『SHOW Beyond the Door』では初めて構成・演出も手掛けました。
何ヶ月もかかって作ったわりには2日で終わってしまって、花火職人みたいでしたね(笑)。選曲、キャスト、照明、衣裳、装置、すべて自分で決めなくてはいけなかったので、まずどこから始めたらいいのか、宝塚の演出家の三木(章雄)先生や、TATTOO 14でご一緒させていただいた演出家の(小林)香さんに相談しました。
キャストの上口(耕平)君と(三井)聡君には振付もやっていただいたのですが、素晴らしい世界観を持っていて助けられました。宝塚時代も、自分がみんなを引っ張っていたと思っていましたけれど、実は周りに支えられていたんですよね。そのことを改めて思い出しました。人生で一番頑張ったと思うぐらい大変でしたが(笑)、もう1回チャレンジしてもいいかなとも思っています。チャンスがあれば宝塚の演出も1度やってみたいですね・・・なんて(笑)
「やっぱりスカートだけでは生きていけない」
――この3年で、宝塚や男役への思いに変化はありましたか?
宝塚の卒業生として、恥ずかしくない生き方をしたいなとは今も常に思っています。退団当初は、何もかも宝塚を基準に考えている自分が、いつまでも宝塚に固執しているみたいでもやもやしていたこともありましたが、「Beyond the Door」のパンフレット用の対談で荻田(浩一)先生に、「宝塚という指針があって判断できるのはいいことだよ」と言っていただいて、今は気持ちの整理がついてきています。
服装ひとつとっても、去年は、ダンス公演でご一緒させていただいた原田薫さんが、パンツもスカートも自由自在に着こなしていらっしゃるのがうらやましくて・・・。私は、「きょうはスカートを履こう!」って気合いを入れないと履けなかったので(笑)。それが今年はあまり気負いなくスカートを履けていて、去年と感覚が違うなと思いますね。でも、『屋根の上のヴァイオリン弾き』では舞台上でずっとスカートを履いていたので、ストレスが溜まって溜まって(笑)。やっぱり私はスカートだけでは生きていけないんだと思いました。
――12月23日には、去年と同じ川崎悦子さんの構成・演出・振付で、ディナーショーが開かれますね。
去年はいろいろ提案もさせていただきましたが、今年は曲だけお渡しして、構成等全て悦子先生にお任せしました。1回きりですし、クリスマスなので明るく楽しく大人っぽく、アットホームなディナーショーにしたいですね。
「宝塚ほど華やかで愛にあふれた場所はない」
――宝塚100周年を前に、『DREAM,A DREAM』にゲスト出演していかがでしたか?
すごいスターさんばかりで、まさにドリームでした。普段、新しい作品に入る時は緊張しますけど、皆さん宝塚を愛していらっしゃるのが空気でわかるので、顔合わせでも1ミリも緊張することなくいられて、心地よかったです。それぞれ時代を背負ったトップだったことをお互いが認識しているので、個々の意見も尊重して稽古が進んでいく感じでした。
――4月には、100周年の夢の祭典『時を奏でるスミレの花たち』に出演予定です。
これは何を措いても出ないわけにはいかないですね。願わくば100周年まで現役トップでいたいと言っていたぐらいですから。さすがにあと4年は無理だと思って諦めましたけど(笑)。宝塚のように華やかで愛にあふれた場所は、他のどこを探してもないですよ。退団公演の千秋楽には、2500人のお客様ほぼ全員が、退団者の宝塚人生に思いを馳せ、情熱や愛情を持って観てくださる。客席と舞台が1つになるんです。私も千秋楽を観に行って、「雪組最高!」って叫んだこともありますけど(笑)。これからも “清く正しく美しく”、伝統を守りつつ、時代と共に発展していって欲しいですね。
「断捨離に挑戦して、さらに可能性を広げたい」
――マイブームは何ですか?
スムージーです!性能のいいミキサーをいただいたので、ホウレンソウとキュウリとキウイと、豆乳とゴマと蜂蜜を入れて、それを毎朝極力飲むようにしています。オフの日は、その後トレーニングで一汗かいて、シャワーを浴びて、納豆ご飯を食べる。
――挑戦してみたいと思っていることは?
“断捨離”(笑)。電化製品がどんどん壊れてしまって新しく買い換えたので、他の物ももうちょっと整理しようかなと思っています。宝塚を辞めた当初着ていた服も、男役の延長みたいで嫌だった時期があったんですけど、髪が伸びてくると、まったく同じ格好でも同じには見えなくなってきますよね。さらに断捨離で、ファッションもいろいろな可能性が広がるかなと思って楽しみにしています。
スカートもパンツもカッコよく履きこなす水夏希さん。宝塚100周年の2014年には、現役男役たちを引き連れて、女性にも男性にも憧れられる水さんならではの、スタイリッシュで颯爽としたパフォーマンスを拝見したいです。もちろん構成・演出も水さん自身で。
撮影 / 吉原朱美